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これまでのわたしの人生の中で――というとすごく大げさだけれど、音楽や映画や書物などの芸術作品が占める割合はすごく大きくて、それらを取り除いてしまったらきっとつまらない物ばかりが残るんじゃないかと思うほど、わたしにとってそれらはささやかな愉しみながら必要不可欠なものでもある。

人には人生のいろんな時期に様々なエポックがあって、そういうイベントと共にその時代時代の記憶が残されていくのだろうと思う。
わたしの場合はたいていそれらは音楽や映画と絡んでいて、あの頃はあの音楽や映画に夢中だったなぁ、というのがひとつの記憶の鍵になったりする。

小学生の時に初めてコッポラの『ゴッドファーザー』を見た時の感動とは違う、あの衝撃。
あの人間描写の深さ、暴力の激しさ(料金所でソニーが射殺される場面!)、家族の絆の強さを、子供心に深く深く刻んだのだった。
何十回、何百回と見る機会があってもその印象は少しも変わることなく、今もわたしの映画ベストテンに必ず入る1本だ。

しかし10代半ばの高校生だったわたしにものすごい衝撃を与えた映画が現れた。
たぶんこの映画がわたしに与えた衝撃というのは今振り返っても相当大きい。多感な時期に見たからなのか、題材のせいなのか、とにかくその打撃は大きかった。


deerhunter今日、家に帰ってきたらルームメイトが見ていた映画がまさにその映画、『ディアハンター』だった。

この映画を見たのは映画が公開されたずいぶん後で、今では記憶も曖昧だけれど、たぶんレンタルビデオを借りてきて見たのだと思う。
でも公開時に話題になったのはすごくよく覚えている。
あの当時うちの兄が角川の『バラエティ』というサブカル雑誌を読み始めていて、映画や音楽や小説などのサブカルチャー情報が満載されたその雑誌をわたしも毎月楽しみに読んでいた。
その『バラエティ』でもすごく大きく取り上げられていたのが印象的だったのだ。

当時のマイケル・チミノ(監督)はとにかくいろいろと伝説と問題を抱えた人で、『ダーティーハリー2』の脚本家として順調な映画人生を歩み始め、翌年には『サンダーボルト』で監督デビューを果たしている。
イーストウッドと若造ジェフ・ブリッジスの銀行破りの痛快な物語で、デビュー作にして非常に高い評価を得た作品だった。

チミノはこの映画の成功によっていろんなオファーがあったのを全て断わり、満を持して撮った映画が『ディアハンター』だった。そしてオスカーの作品賞を含め、監督賞、撮影賞(ヴィルモス・ジグモンド)、助演男優賞(C.ウォーケン)他、その年の映画賞という映画賞を総ナメにした。

表現の乏しさからこの映画に対する自分の感情をうまく表現することができない。「感動」というのとは別物の、「衝撃」としか呼べない何か。

こんなに泣いてしまったのは生まれて初めてなんじゃないかと思うぐらい、喉が痛くなってしまうぐらい、呼吸が苦しくなってしまうぐらい、「どうしてなんだろう、どうしてこういうことになってしまったんだろう」、と感情が上手くコントロールできずに映画のことを思い出してはまた涙する日々だったのだ。

何がそんなにわたしの琴線に触れたのか、この映画は相当長い間わたしの心の中にとどまっていて、そしてわたしを揺さぶり続けていた。
今もその ”何か” は上手く説明できない。
決して感動大作でもないし、ベトナム戦争を題材に使っているけれども戦争映画だとも思わない。敢えて言えば青春の半ばに戦争に駆り出され、人生が少しずつ違う方向に進んでしまった若者達の群像劇だ。

今でもこの3時間を超える長編の中で、マイケル(デ・ニーロ)、ニック(ウォーケン)、スティーブン(J.サベージ)がベトコンにロシアン・ルーレットを強制させられる場面を正視するのは苦手だ。
大学の頃、この映画の日本での上映権が切れる最後ということで梅田の70mmのシネスコサイズのスクリーンでリバイバル上映されたのを見に行ったけれど、戦場シーンは(当然ながら)TV画面で見るよりもド迫力でますます弱ってしまった。

しかしその分最後にジョン・ウィリアムスによる繊細なクラシックギターの調べに乗せて映し出されるC.ウォーケンやデ・ニーロの笑顔のアップが悲しいほど美しく、マイケル・チミノに思うツボ!と泣きながら思っていた。

戦場に出る前の、スティーブンの結婚式とその後の鹿狩りのシーンまでがしつこいほどに長く、そしてその描き方が細かければ細かいほど帰郷してからの彼らの人生の変わり様が痛々しく、深く心に刻まれる。

この映画によって「君の瞳に恋してる」と「God Bless America」はわたしにとって忘れられない曲になってしまった。

そうして永遠のレクイエムとして、ジョン・ウィリアムスが奏でるスティーブン・マイヤーズの名曲「カヴァティーナ」も。

この先、この映画を見た時のような衝撃をまた味わうことのできる映画に出会うことができるのだろうか、とふと思ったりする。
人は年齢と経験を重ねていき、新鮮さは次第に衰え、感受性だって鈍ってくるのだろうけれど、変わらずに心揺さぶられる映画に出会いたいと心待ちにしている。

内容は似ても似つかないけれど、この映画の後に数え切れないほど繰り返し見た映画がジェームズ・アイヴォリーの『眺めのいい部屋』だった。

最近、繰り返し見る映画に出会ってないなぁ。






















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