最終回は意外なほどにサッパリと、アッサリと、余韻少なく、でも味わい深く終わった。
きっとそれは最後まで引っ張った「一平の父親探し」というエピソードにそれほど強い関心がなくて、それよりも変わり行く坂下の人々の人間関係や心の揺れや、一平と雪乃の母子の関係などが描かれた第5話、6話、8話あたりの余韻を残した演出が大好きだったからかも知れない。
それでも雪乃ちゃんが一平に「津山冬彦は父親ではない」と打ち明ける喫茶店のシーンはすごくよかった。こういう、ちょっと拗ねてちょっと不服そうな時の二宮くんはほんとにいい。不信感丸出しの、伏目がちだったり上目遣いで雪乃ちゃんを睨みつける一平は、多くを語らずとも彼の怒りを見事に表していた。
「遅いね」
「今さら言われても信じないね」
「嘘だね、あんた話作ってるよ」
父親のことで一平に対して負い目を感じている雪乃ちゃんに、肉親だからこその無遠慮な苛立ちのトドメの一発として「あんた」と突き放して呼んだことに、ちょっとドキッとする。
雪乃ちゃんがナオミに会って誤解を解く。
津山冬彦が一平に会って誤解を解く。
皆表立っては接触せずに、本人たちにはわからないようにさり気なく立ち回る。
大人の仕事です。
今回一番ジーンときたのは、東京を離れる女将さんが鼻歌を歌って始終車中でご機嫌な姿だったこと。
そして女将さんと共に坂下を消える決心した竜次が一平に左利き用の包丁を贈るところ。
「使いにくかったら使わんでいい。楽な方を選びな。」
一平にとって料理の師であり人生の師でもある竜次の、一平に贈る最後の言葉。
自分の道は自分で決めろ―― あぁ、竜次という頼れる心の拠を失ってしまう一平の心境は、どんなにか心細いだろう…。
「今の一時はな、後悔を生むぜ」
なんだか石原裕次郎みたいな言い回しじゃないか。
いちいちカッコいいじゃないか。
雪乃ちゃんの根回しでナオミと再会を果たす一平だけれど、4月からパリに行ってしまう彼女との関係は語られないままだ。
そして坂下を閉めてしまってからの、その後の一平の進路も語られないままだ。
ただ閉店を控えて忙しく働く彼の姿が映し出されるのみ。
動きだそうとする町と店のその直前の瞬間で時間が止まってしまった。
森山良子の『パピエ』が久しぶりに流れ、”その後の坂下の人々”の様子がエンディングで紹介される。
竜次は東京を離れ、エリと時夫はいつもの”子供人生相談”(?)、松子さんは年下のBFに失恋した模様、澄子さんは子供との時間を過ごす、保さんはカナルカフェでたそがれ、ルオーさんは相変わらずカメオ出演に精を出し、若女将はエリに活け花を教え、一平は雪乃ちゃんのショッピングの荷物もちをさせられている。
何げない日常の風景で幕を閉じた『
拝啓、
父上様』。
最終回を盛り上げるため延長拡大、というパターンが多い昨今のドラマにおいて、気負いなく普段通り、さり気なく爽やかに、特別なことは特になし、これはこのドラマの基本姿勢だったと思うので好感が持てる。
欲を言えば、その後の一平とナオミはどうなったの?一平はどんな進路を選んだの?と「もっと、もっと」とその先を知りたくなってしまってしまい、このエンディングに多少の物足りなさを感じるところもあるんだけど、でもまぁそこは「腹八分目」ということで、お腹いっぱいにガッついてしまうのは品がないということなのかも知れないなぁ。
振り返ってみると、「ちょっといい時間を過ごしちゃったなぁ」という味わいのあるドラマでしたね。
…続編、期待してもいいのかな?(笑)