
今夜はまだちょっと興奮が収まらない。
Amazing, Amazing, Amazing !
ついさっきまで、
Jamie Cullumのライブを見ていたのです。前回のドナルド・フェイゲン以来、3週間ぶり、今月2度目のオペラハウスで。
やはり見に行ってよかった。
今日のライブは、長いわたしのライブ人生において、恐らくベスト5に入る素晴らしさだった。
いつまでも演奏が終わらなければいいのに、この興奮が続けばいいのに、と見ながらずっと思っていた。
ジェイミー、とにかく今夜のあなたは素晴らしかった。
7時半にスタートの予定で、わりと時間通りに場内が暗転したので、「おっ、さすがはイギリス人ねっ!」なんて思っていたら、今回の彼のUSツアーにはツアーメイトがいたのだった。シアトル出身のブランディ・カーライルで、彼女はバンドと共に登場して30分ほど演奏した。

それから15分ほどのインターミッションがあって、ようやくジェイミー・カラムが登場した。
黒のジャケット、赤いシャツ(その下には黒のTシャツ)、黒の細いネクタイ、色褪せたジーンズ、そしてブルーのラインのスニーカー。
3月は彼の昨年発売されたアルバム「Catching Tales」のUSツアー月間で、西から東へ計17本のライブを行い、今日、ボストン公演がその最終日を飾るのライブだった。
今日が千秋楽だという軽い興奮も彼の中にあったのかも知れないけれど、はじめっからもう演奏するのが楽しくて仕方ない、という空気に充ち満ちていた。
わたしは彼ほど全身で音楽を表現する楽しみと喜びに溢れた人を見たことがない。そしてそれが全く自然に彼の中からわいて出てくる瞬間を、わたしたちは目の当たりにすることができるのだ。これは生で演奏を聴く人間にとって、この上ない楽しみではありませんか。
彼はジャズピアニストでシンガーだ。
彼のピアノの演奏技術とセンスはものすごく優れているのだけれど、しかし何より彼の最大の魅力は、その決して美声とは言えないけ、でも大きくて伸びのある、その声にあるとわたしは思う。
彼は根っからのパフォーマーなのだ。全身で音楽を表現するのが楽しくて仕方ないのだ。だから彼の演奏を見ているだけで本当にワクワクするのだ。
彼はピアノを弾かなくても、シンガーだけであっても通じる歌唱力と表現力があり、やんちゃな子供のようにじっとしていることがない。
ピアノのイスは彼にとってはあってないようなもの。
そこに座っていることはほとんどなく、立ったままペダルを踏んで弾く、ハンドマイクで前に出てピアノを弾かずに歌う、スキャットする、ハミングする、口(くち)スクラッチ、ピアノに登る、鍵盤に乗っかる、ピアノの弦で弾く、ピアノの下に潜り込んで叩く、ピアノのフタを指ドラムでパチパチ叩いて鳴らす――とにかく表現できることの全てをやってしまう人なのだ。
そしてまたピアノに戻って奏で始めると、本当にこのまま彼が演奏を止めなければいいのに、と思ってしまうほど素晴らしい演奏を披露してしまのだ。
彼の音楽を伝える手段としてCDやライブ映像があるけれども、やはり記録物では彼の全てを伝えられない。今、その瞬間に、動いて、演奏して、ホールの空気を振動させて音を創りだしている、まさにその瞬間の姿なしでは彼の音楽は成立しないんじゃないかと思ってしまうぐらい、彼のパフォーマンスは心を動かすのだ。
GFがブラジル人で、その影響もあるのかも知れないが、彼の新しいシングルである「London Sky」のアレンジは、フォーキーなものから最後は怒濤のようにサンバのリズムに変わっていった。
この曲で彼はギターを披露したのだけれど、これがまた上手いんだな。やはりセンスのある人は何をやらせても上手いということか。
ギターを弾いて歌う彼はジャズピアニストはにはとても見えない。本当にロックバンドの若者そのもの。
ステージにブランディと彼女のバンドも皆勢揃いして、みんなでカーニバル状態。彼も飛び跳ねながらタイコを叩き、会場はものすごい盛り上がりを見せた。
彼のステージは2時間20分ほどあったのだけれど、この大サンバ大会が終わったら、静かにJazzの演奏になったりする構成が非常に上手かった。計算してなのか、そうでないのかはわからないけれど、感情の高まりが自然に穏やかな音楽にスイッチして、尚かつ胸に染み渡る空気を作り出せるなんて、技術でやってみたところでそう簡単にはできないだろうと思う。これは本当に彼の演奏能力や歌唱能力を超えたところにある、彼の自然体でひたむきな人柄からにじみ出るものなんじゃないだろうか。
ライブも最後に近くなり、ブランディが再び出てきてジェイミーと2人でエルトン・ジョンの「ロケットマン」をデュエットした。憎らしいほどジェイミー・カラムの「ロケットマン」はよかったんだけど、彼のピアノをバックに歌を歌えたブランディは本当に幸せものだとしみじみと感じた。そのぐらい、彼のピアノは美しく、そして決して歌を邪魔しなかった。
その後バンドのメンバーが一旦ステージからはけて、彼がソロでステージに残った。デビューアルバムであり、グラミーも獲った『Twentysomething』から何曲か演奏してくれたけれど、わたしがこのアルバムで最も好きな「Hight and Dry」を演奏する時、コーラスの指揮者のように「こっから左の人はこのメロディを」「こっから右の人はこのメロディを」と割り当てられて、わたしたちは彼のピアノを伴奏に歌を歌ったのだ。
「大きな声で歌う必要はないよ、ただ口ずさんでくれれば」
彼はそういって、途中で演奏を止めてわたしたちの歌声をしばらく聴いていて、そしてわたしたちのそのコーラスに合わせてマイクなしで自分も歌いながら、そしてまたピアノに戻って演奏を続けた。
彼のピアノに合わせて歌うということの幸せが実現するとは!ついさっき、ブランディが歌った時に「なんて羨ましい!」と思ったけれど、彼は躊躇なくわたしたちのためにも演奏してくれたのだった。
その流れのまま歌われた「Hight and Dry」は非常に美しく、そして恐らくかれの最大のヒットであろう「All at Sea」を最後に演奏は終わった。演奏する彼も、聴いているわたしたちも、このまま終わらなければいいのに、と思いながら。
ホールが使える最後の最後の瞬間まで、彼はスタッフに「後何分演奏できる?まだ5分ある?」と確認して、まだみんなが帰ろうとしないのを名残惜しそうに「もっともっと演奏したいんだけれど、もう時間がないんだって、また近いうちに会おう!」と言って、汗びっしょりになって小柄な体を揺らして手を振って去っていった。
何度も何度も「本当に素晴らしい夜だった!」と喜びながら。
ホール全体が「彼の音楽を聴いていたい」という思いに包まれて、彼とバンドの演奏に魅せられて、同じ興奮を共有し、一体化したような感覚というのはそうそうあることではない。こういうライブに立ち会えたことは殊更に幸せだ。
彼は5月にUSで追加公演を行うことにしたようだ。でも中西部と西部+フロリダだから残念ながら見に行くことはできなさそうだ。
日本でも6月に来日公演があるみたいだけれど、名古屋公演以外は全てソールドアウトになっていた。
彼のライブは素晴らしいですよ、名古屋と名古屋近辺の皆さん、急ぎましょう。(笑) わたしはおととし、うちのすぐ近所の有名なライブハウスに彼が来たことを知らずに見逃した失態を犯していて、本当にあれは残念だった。ライブハウスのような小さな空間で、彼のピアノと声を驚くほど間近くで聞くことができるなんてこの上ない幸せなので…。
今また『Twentysomething』を引っ張り出してきて聴いているけれど、やっぱりどうもCDとは違うんだなぁ。
ジェイミー、あなたはやはり天性のパフォーマー。
近いうちにまた会いたいです。
【追】 Live@LAUNCH で「Get Your Way」を演奏している様子(スタジオライブ?PV?)とインタビューがYahoo!の
ミュージックサイトで見ることができたー。これは昨日のライブと同じメンバー。 (3/31/06)