わたしはドキュメンタリー番組や映画が大好きでよく見るのだけれど、2002年にアメリカで公開された長編ドキュメンタリーには優れた作品が多かった。
その年のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門は混戦で、ただ社会的な話題性や監督のマイケル・ムーアのパフォーマンスもあって、注目度の高かった『Bowling for Columbine (ボーリング・フォー・コロンバイン)』が最終的にオスカーを獲得した。
日本でもヒットしたのかも知れないけれど、『ボーリング…』と受賞を競い合ったノミネート作品である『Spellbound (スペルバウンド)』と『Winged Migration (WATARIDORI)』の2作品は特に人気が高く、ボストンの家の近所にあったミニシアターでもロングランで上映していた。
わたしはこの中でとりわけ『Spellbound』が大好きで、実は政治がらみで話題になった『ボーリング…』よりも純粋に楽しむことができたこの作品が受賞しないかな、なんて期待していた。
これは毎年アメリカのESPNという局で放送される、全米で人気のあるスペリングコンテスト(子供達が単語の綴りを正確に当てる競技会:通称「スペリング・ビー」)に出場した子供達を追ったドキュメンタリー。
全米の地区別に予選会が行われ、その地区大会を勝ち抜いた250人近い子供達が全国大会に集まり勝者を決める。映画はその本戦に残った中の8人にスポットを当て、彼らが予選に出る以前から本戦での闘いぶりまでを丹念に映し出す。
アメリカではこのスペリング・ビーに出場し、優秀な成績を収めることはとても名誉なことで、非常に権威と人気のあるイベントだ。それだけに、この大会で勝つことは出場する子供本人だけでなく、その家族にとっても意義の大きいことになる。
小学生の子供達がどんな思いとどんな環境でその大会に臨むのか、家庭の経済事情から民族のアイデンティティに至るまで、このイベントの裏側に存在するいろいろな出場者の背景が見えて興味深い。
WOWOW2(5/28)&WOWOW3(6/15)でこの『
スペルバウンド』が放送される。
”spellbound”というのは「(呪文で)縛られた」とか「魅せられた」という意味の形容詞だが、「綴り方」という意味のスペリングにも引っかけた意味がある。まさしくスペリング・ビーのコンテストの魅力・面白さを示す意味もあるのだ。
残念ながら邦題のタイトルは
『チャレンジ・キッズ 未来に架ける子供たち』
という、しゃれっ気も面白味も全然ない邦題がつけられている。敢えて言えば「架ける」という字を当てたところに含みを持たせていると言えようか。
気持ちはわかるが「見てみたい」と思わせる輝きが全くなく、岩波の教育映画のような真面目で硬い印象になってしまう。本当はものすごく笑って楽しくて、そしてコンテストの参加者を通して現在のアメリカ社会を取り巻く環境(特に移民や低所得者層の状況など)が透けて見える作品になっているのだけどなぁ。
『Roger&Me』『The Fog of War』『March of Penguins』と並ぶ、わたしの好きなアメリカドキュメンタリーの秀作です。